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名古屋高等裁判所 昭和61年(ネ)130号 判決

名古屋市港区南陽町大字茶屋後新田字ロノ割四五〇番地

控訴人

成田稔

右訴訟代理人弁護士

大友要助

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

遠藤要

右指定代理人

秋保賢一

牧征夫

鳥居陽

高橋直美

小林茂吉

川原章生

右当事者間の損害賠償請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、当審において請求を減縮した上「原判決を取り消す。被控訴人に対し金三〇〇〇万円及びこれに対する昭和五八年四月一九日より支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求め、なお、仮に仮執行宣言が付される場合には、担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の主張は、次に訂正・付加する外、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する(但し、原判決四枚目表六、七行目及び同裏九行目の各「当庁」をいずれも「名古屋地方裁判所」と改める)。

(控訴代理人の陳述)

一  原判決五枚目表末行の「この面で」から同裏二行目までを「もし名鉄への出入りが禁止されず、従前どおり商売ができれば、昭和四〇年から一〇年間平均金二〇〇万円の収益を挙げ得たはずである。しかるに、名鉄への出入り禁止に加え、国税局から控訴人名義の外、家族名義の不動産及び動産の全部が差し押えられたため、金融の道が断たれ、農協や銀行から融資を受けて不動産業を営むことが不可能になつた。この間における五年間の得べかりし損害金一〇〇〇万円を請求する。)と改める。

二  原判決九枚目表九行目と一〇行目との間に、行を変えて、次のとおり加える。

「(4) 次に協議団の担当者であつた寺尾武は、本件賦課処分の違法を知り、一部取消しの裁決をしたのに、残りの大部分については調査担当者に対する気兼ねから、その査定を鵜呑みにした点に過失がある。」

三  原判決九枚目表一〇行目の「前記2(一)ないし(三)」から同裏一行目の「金三〇〇〇万円」までを「前記2(一)ないし(四)の合計金三一二四万〇六七〇円のうち金三〇〇〇万円及びこれ」と改める。

(被控訴代理人の陳述)

一  原判決一〇枚目表三行目の末尾に続けて「なお、控訴人請求の各弁護士費用は、控訴人主張の不法行為との間に相当因果関係がない。」を加える。

二  原判決一五枚目裏末行の次に、行を変えて、次のとおり加える。

「(4) 請求の原因3の(二)の(4)のうち、寺尾武が協議団の担当者であつたこと、及び本件賦課処分について一部取消しの裁決がなされたことは認めるが、その主張は争う。」

(証拠関係)

本件記録中の原審及び当審における書証目録及び証人等目録の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の被控訴人に対する本訴請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次に訂正・付加する外、原判決の理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一六枚目裏三行目の「もつてしても」を「もつてすれば」と改める。

2  原判決一七枚目裏三行目の「乙」の次に「第二号証、」を加える。

3  原判決二一枚目表七行目の「原告本人は、」の次に「原審及び当審において、」を、同裏二行目の「甲第八号証」の次に「、」をそれぞれ加え、同二、三行目の「及び成立に争いのない」を削り、同三行目の「(甲第五号証)」の次に「、」を、同じ行の「第六号証、」の次に「いずれも成立に争いのない」を、同二二枚目裏一〇行目の冒頭に「原審及び当審における」をそれぞれ加える。

4  原判決二七枚目表九行目と一〇行目の間に、行を変えて、次のとおり加える。

「五 控訴人は協議団の担当者であつた寺尾武に国家賠償法一条にいう故意または過失があつた旨主張するので、この点について判断をする。

名古屋国税局長が昭和四一年四月一八日付で原判決別紙(一)〈Ⅱ〉記載のとおり、昭和三六、三七年分については審査請求棄却、昭和三八年分については一部変更の裁決をしたことは前示のとおりであり、寺尾武が控訴人の審査請求事件を担当した協議団の一員であつたことは当事者間に争いがない。

そして、いずれも成立に争いのない甲第一号証の一乃至六、当審証人寺尾武の証言によると、寺尾武は控訴人の審査請求事件において調査を担当したところ、控訴人の昭和三八年分の営業所得に関して、名古屋市西区松前町に所在する豊田恭郎外一名所有の土地及び常滑市小鈴谷地区に所在する加藤譲所有の土地の売買について調査した結果、原処分の所得の認定が一部誤つているとの判断に達したが、控訴人の昭和三六、三七年分の所得及び昭和三八年分のその余の所得については、いずれも原処分の際になされた調査結果のみに基づいてこれを正当として是認した上、協議団の合議に際してその調査結果を報告し、右報告どおりになされた協議団の議決に基づいて名古屋国税局長が裁決したこと、以上の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定事実によると、寺尾武は右認定にかかる二件の売買事例についてのみ新たな調査を行い、その他の点については原処分時の調査を是認したにすぎないことが明らかであるが、前記認定事実によると、原処分時における調査によれば、控訴人の売上金額は、名鉄及び名鉄不動産に対する反面調査によつてこれを正確に把握し、仕入金額については、これを裏付けるべき各種の原始記録の作成、受領、保存が全くなされておらず、代金の決済は現金で行われており、さらに調査に際して控訴人の協力が得られなかつたため、推計により算出せざるを得なかつたものの、このようにして得られた売上金額と仕入金額から売買差益を認定するに足りる資料がすでに揃つていたのであるから、これらの資料により寺尾武が原処分時の調査を是認した点に故意または過失があるということはできない。」

5  原判決二七枚目表一〇行目の「五」を「六」と改め、同裏一行目の「できない」の次に「し、本件裁決の際に協議団の一員であつた寺尾武に故意過失が存したということもできない。」を加える。

二  そうすると、右と同旨の原判決は相当である。

よつて、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 黒木美朝 裁判官 西岡宜兄 裁判官 喜多村治雄)

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